気になる「境界線」について考えてみよう(中編)

測量風景

法務局(国)には現在2種類の図面が保管されています。

一つが『公図』という土地の地番と大まかな形だけが描かれている図面、
もう一つは『地積測量図』という土地の形状・辺長・求積表・新しいものでは座標値などが描かれている図面です。

『地積測量図』は登記に記載されている『地積』の根拠となる境界線を明示した唯一の図面であり、誰にでも閲覧可能なものとして不動産取引の安全に寄与し、
国民の境界トラブルの解消や、現地で亡くしてしまった境界杭の復元にも利用され、私たち土地家屋調査士にとってなくてはならない、境界線を導く際に利用する最重要資料の一つになっています。

しかし『地積測量図』は全ての土地に存在しているわけではありません。登記されているからという理由で法務局に行けば、自分の土地の図面はあると思っているお客様も多くいらっしゃいます。

前編を読まれた方はピンとくるかもしれませんが、ほぼ全ての土地は明治時代に国民からの申告によって誕生し、後の登記制度が創設される際の基盤になっています。
つまり「登記」はされているのが当たり前で、『地積測量図』があるかないかは別の話になります。

それではどのような土地だと『地積測量図』があるのでしょうか。

土地の地番と大まかな形だけが描かれている図面

それは過去に測量がされたことがある土地で、図面が法務局に納められていることが大前提となります。

ここで注意が必要なのが、測量しただけではダメということです。
よく測量図をお持ちのお客様も多くいますが、その図面が法務局に納められていないと国が管理している境界、いわゆる公法上の境界線にはならないということです。

また、折角納められたとしても年月が古いと『地積測量図』は残っていません(ただし、地積は自己申告されたものから書き換わっています)。

私の感覚では『地積測量図』がある土地は全体の3割にも満たないと考えています。
7割以上の土地は境界線を示す公的図面はなく、折角過去に測量した土地であったとしても、相続や売買時に次の所有者へ適切に引き継がれないと、いつしかどこが境界線か分からなくなってしまいます。

そこで、法務局に納めることによって公となった図面は、紛失しても、相続しても、いつでも閲覧可能な安心管理された『地積測量図』になります。
「ではどうして測量したのに法務局へ納めなかったのか」と疑問に思う人もいると思います。

不動産登記権利情報

それは当時の人間が手を抜いていたからではなく、図面を納めるのには登記する理由が必要だったからです。
例えば、土地を分割する分筆登記や登記されている地積が間違っている時にする地積の更正登記など、登記申請をしないと地積測量図を納めることが出来なかったため『地積測量図』は思うように増えていきませんでした。

現在は条件をクリアした図面は登記申請を経ずに法務局に納めることが出来るようになりましたが、まだまだ認知もされておらず、課題も多く残っています。

後編に続きます。

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土地家屋調査士法人白石事務所
土地家屋調査士法人白石事務所
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記をお客様に代わって申請できる唯一の国家資格を持つ専門家です。不動産は高価な資産であり、正確に登記することが財産の保全にも繋がり取引の安全が計れます。当事務所では、昭和26年開業以来『迅速』『丁寧』『正確』をモットーにさまざまな業務を取り扱ってきました。豊富な経験を生かし、お客様が安心してご依頼いただける、まちの専門家であり続けたいと思っております。

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