現在、『地積測量図』を法務局に納めるにあたり、必ず隣接所有者が境界線の承諾をしていることが必須とされています。
そこには法務局の苦しい事情があり、『地積測量図』が無い土地の登記申請がされた場合、申請された図面が正しい境界線で描かれているか否か法務局も判断が出来ないため、
国家資格者である土地家屋調査士が調査し、近隣所有者から境界線の承諾を得ているのであれば、「今日からその図面を境界線として法務局は扱います」というのが今の制度になっているのです。
考えてみてください。
国民からの申請で『地積測量図』を蓄積し、境界線を確立していくこの制度は、地租改正時の自己申告に似ていると思いませんか?
境界の歴史は常に国民によって作られ、国によって運用されているのです。
境界線を導くために利用する図面は『地積測量図』だけではなく、地方自治体に保管されているものもあります。
古くは関東大震災後に作成された『震災復興図』、終戦後に作成された『戦災復興図』、現代では公共事業で作成された『地籍調査図』『区画整理図』、道路境界線を明示した『道路台帳図』など多くの図面は存在します。
土地家屋調査士は測量地の歴史を調査し、『地積測量図』以外にどんな図面が存するのかも調査していきます。
さて、最後に『地積測量図』や参考になる図面がない土地を測量することになった土地家屋調査士はどうしているのか、同業者から営業妨害だと言われる覚悟でお教えしたいと思います。
まず、測量地や隣接地の所有者へ過去に測量した経緯があるかどうか資料提供を求め、ない場合は境界線の認識を聞き取り調査します。
また、古い塀などの状況確認や地中深くにあるかもしれない境界杭の探索をし、縄伸びがされているエリアなのか確認も踏まえながら測量地も含めた周りの土地の現況面積の調査を行います。
最後は公図の形状を基に境界線を導いていきます。
が…
結局のところ前述の通り、隣接所有者から境界位置に関して承諾してもらわないことには法務局に登記申請が出来ません。
時には心に訴えながら境界線の説明をし、時には爽やかな笑顔を作って信用してもらい、時には長時間の世間話に付き合い、時には依頼者の悪口に相槌を打ち、何度も足を運んで頭を下げ必死になって承諾印をもらっています。
AI(ロボット)には決して出来ない仕事だと常々思っています。
投稿者プロフィール
- 土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記をお客様に代わって申請できる唯一の国家資格を持つ専門家です。不動産は高価な資産であり、正確に登記することが財産の保全にも繋がり取引の安全が計れます。当事務所では、昭和26年開業以来『迅速』『丁寧』『正確』をモットーにさまざまな業務を取り扱ってきました。豊富な経験を生かし、お客様が安心してご依頼いただける、まちの専門家であり続けたいと思っております。
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