3月22日に国土交通省より令和4年公示地価が公表されました。
この公示地価とは、毎年1月1日時点の各市区町村の住宅地・商業地・工業地の地価及び変動率を公表するものであり、国土交通省から委嘱された不動産鑑定士が調査して地価の判定を行っております。
ちなみに私は三浦半島(横須賀市・逗子市・三浦市・葉山町)の担当を任命されております。
毎年、こちらで地価公示に関するコメントを述べておりますが、
今年も令和4年1月1日時点の公示地価の動向を見ていきたいと思います。
まず、全国的な傾向としては全用途(住宅地・商業地・工業地)の全国平均が前年から0.6%上昇し2年ぶりにプラスに転じています。
新型コロナウィルス感染症(以下、コロナウィルス)の影響が「初期よりも和らいだ」という判断が大きく影響しているためと考えられます。
東京圏・大阪圏・名古屋圏の三大都市圏においても、同様の傾向となっており、いずれも前年の下落から反転傾向となりました。
神奈川県内だけで見てみても、住宅地は平均で+0.2%と上昇に転じています。一方、商業地に関しては+1.0%。昨年は+0.1%でしたので上昇幅が拡大しております。
住宅地で最も上昇したのは横浜市西区岡野2丁目。2位と3位は鶴見区(鶴見中央2丁目、尻手1丁目)。
住宅地の地価上昇率県内ベスト5を見ていきたいと思います。
1位は昨年に引き続き横浜駅から徒歩圏内の住宅地域。
元より交通利便性が良いエリアで横浜駅へも徒歩圏内。
横浜駅周辺の繁華な商業エリアの近くに位置する住宅地であり7.5%台の上昇も納得の結果となりました。
2位、3位は鶴見区がランクイン。
いずれもJR川崎駅・京急川崎駅の隣駅に位置しており、ベッドタウンとして交通アクセスと居住環境のバランスの点で人気となっております。
リニア新駅ができる橋本駅周辺も、ここ数年上昇率の上位の常連となっています。
京王相模原線の始発駅で新宿駅まで40分程度という点も人気で、4位(東橋本2丁目)・5位(橋本8丁目)にランクイン。
一方、住宅地県内ワースト5(下落率の大きい順)では相変わらず三浦半島地区が上位を占める結果となりました。
交通アクセスの悪さなどから、下落率上位の常連地区ではあります。コロナウィルスの影響によるテレワーク需要も多少あるようですが、依然としてやはり需要が大きく上がるような結果にはつながっていない模様です。
商業地で最も上昇したのは、緑区橋本2丁目でした。
次に、商業地の県内上昇率ベスト5を見ていきたいと思います。
橋本駅周辺は2027年のリニア開通に合わせて、大規模な再開発事業が行なわれており、今後の更なる発展が期待され5.8%の上昇率となったようです。
2位の厚木市中町も本厚木駅北口に新たな商業施設が建設されることが要因となっています。
特に本厚木駅はLIFULL HOME’Sが行った「2022住みたい街ランキング」で第1位に輝いております。
コロナウィルスの影響でリモートワーク需要が見込まれる状況下で、商業地に関しても期待値が高まった結果だと考えられます。
なお、3位は港南区港南台4丁目(港南台駅)、4位は茅ヶ崎市新栄町(茅ヶ崎駅)、5位は前年度上昇率2位だった神奈川区鶴屋町(横浜駅)という順位となりました。
一方、下落率トップは三浦市三崎4丁目。2位は昨年下落率トップだった中区山下町となりました。
山下町に関しては横浜中華街エリアなのですが、依然として客足は回復し切らず、厳しい結果となっております。
なお、3位(横須賀市公郷町2丁目)、5位(横須賀市衣笠栄町)は1位とあわせていずれも三浦半島エリア。
市外からの需要に乏しく、住宅地域同様厳しい結果となりました。
4位は湯河原町宮上となっており、神奈川県西部地区も三浦半島同様、全般的にさびしい結果となっております。
コロナウィルスが世に蔓延し約2年が経っております。
テレワークの普及などの影響で、住まい選びの条件は勤務先への「通いやすさ」だけではなく、「買いやすさ」も比重が大きくなりました。
特に都心まで電車1本で1時間圏内の地域の人気が高まっています。
例えば、鶴見区などは隣接する川崎や横浜の中心部と比べると値ごろ感があり、都心への交通アクセスも良く、総合的に選ばれる街となっている結果、地価上昇していると考えられます。
本厚木や橋本、茅ヶ崎、平塚なども人気が高まっています。
一方、横浜駅付近などは都心在住者が7,000万円~1億円といった高価格帯のマンションを購入する取引も見られ、「いつかは住んでみたい」と思っていた富裕層がコロナウィルスを機に動いている模様です。
少しずつコロナウィルスも落ち着きを見せ始めている現在ですが、今後住宅選びにリモートワークが影響を及ぼし続けるのか、また中華街などの飲食店中心で大打撃を受けた商業地がどのような回復を見せるのか。
非常に難しい局面ではありますが、引き続き注視していきたいと思います。
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