国民が司法に参加することを目的とした制度「裁判員裁判」に参加する裁判員の年齢が、これまでの20歳以上から18歳以上となることが今年5月の法改正により決まりました。
そのため2022年4月から、18歳以上の裁判員が参加することがあり得ます。
最近、色々なものが20歳以上から18歳以上に変更されていますが、今回はこれらの点を整理したいと思います。
成人年齢
民法は、満20歳で成年としていました(旧民法4条)。これに合わせて選挙権も20歳以上に与えられ、飲酒や喫煙も20歳以上に認められていました。
刑事事件を起こした場合も、少年法により20歳未満の人は「少年」として扱われ、原則として通常の刑事裁判ではなく、
家庭裁判所での審判(保護観察や少年院送致など少年の更生のための処分)をするとされています。
このように、これまでは20歳を基準にして成年・成人と未成年・少年として区別し、一律に対応を変えていました。
諸外国では20歳ではない年齢を成人年齢としている国もありますが、日本では1876年(明治6年)から20歳を成人としてきたという歴史があります。
成人年齢の変更
しかし社会の変化により、「20歳未満であっても成人同様に扱った方がよいものがあるのではないか」という議論が起こりました。
まずは選挙への参加年齢について議論がなされ、2015年に公職選挙法が改正され、選挙権を18歳以上に認めることとなりました。
これにより、20歳を基準にして一律に区別してきたことが変わりました。その後、2018年には民法も18歳をもって成年とすることと改正されました。
民法は「人が生活する上での取引(契約)など」について取り決めた法律ですが、改正された後は18歳になれば、親の同意がなくても不動産の購入などの契約を行なうことができます。
そういった流れの中で、今回、裁判員裁判の参加年齢が20歳以上から18歳以上に変更されることになったのです。
裁判員裁判とは
裁判員裁判とは上記のとおり、国民に裁判員として刑事裁判に参加してもらい、司法に対する国民の理解を深めることを目的としたものです。
3名の裁判官と6名の裁判員とで刑事裁判を進め、裁判員は、法廷で行われる審理に立ち会い、裁判官とともに被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にするのかを判断します。
裁判員裁判の対象事件には、殺人など人が死亡した事案も含まれます。
証拠には死亡した人に関するもの(遺体状況に関するものなど)も含まれます。
こういった証拠については、直接目に触れることで精神的な苦痛を負ってしまうことがあり、直接的ではないもので代替する対応がされているようです。
年齢引き下げの影響
裁判員の対象年齢が引き下げられたということは、18歳の人が人の死に関する証拠などに触れることになる可能性があります。
また、裁判員裁判では死刑判決を下すような事案も対象となるため、18歳の人が死刑判決に関与する可能性もあります。
18歳が成人となったとはいえ、未だ若年といえますので、そういったことに関わることが精神的にどのような影響を与えるのかを注意しなければなりません。
今後の運用においては
「若年の裁判員に対してこういった証拠にどのように触れてもらうのか」
「死刑の求刑が予想される事案にどのように関わってもらうのか」
が検討される必要があるでしょう。
なお、裁判員法は学生については辞退の申立てができます(裁判員法16条)ので、高校生の場合には辞退することができますが、
仮に参加する場合には、通っている学校についてどう扱うのかも事前に決めておかないといけないでしょう。
今後、18歳以上の人が裁判員裁判に参加することで、実際にどのような影響が生じるのか、報道などを注視していく必要があると思われます。
ちなみに、少年法も今後18歳以上を成人とすることが予定されていますが、喫煙や飲酒については、これまでどおり「20歳以上とする」ことが維持されます。
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