皆さまは、少年法についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「少年の間に起こした事件については軽い処分がなされる」
「事件を起こしても報道されない」
といったイメージが一般的かもしれません。
しかし、少年事件全体でみると、成人したあとの事件と少年事件では、少年事件のほうが長期の身体拘束を受けることが多いのです。
少年が大人とは異なる処遇を受ける理由は、少年が「可塑性」つまり、将来に向かって更生し、変わることができる力を持っているからです。
実際に少年事件を担当すると、子どもが変わる力を持っていることを身近に感じることができます。
最初に会った時には金髪で、「自分は誰からも愛されていない」と突っ張って、鋭い目つきでこちらをにらみつけていた子どもが、鑑別所で何度も話をして、周りの信頼を勝ち得るために自分が変わらなくてはならないことに気づき、
兄弟たちを守るためにもしっかりしなくてはならないと決心を固め、その後立派に更生して、今ではまじめな一児の父をしているのを見ると、
「あの時、きちんと大人が関わることができて、この子は変われたのだな」と改めて思います。
少年法は、子どもの人格に深く入り込んで、おせっかいを焼き、更生のために様々な働きかけをします。
したがって、成人の事件であれば執行猶予になるような事案でも、子どもの家庭環境や心身の状態によっては6か月もの間、少年院で更生プログラムを受けることもあります。
大人の場合「行なった犯罪に見合う刑罰を科す」ということが判断の基準になるのに対して、
少年の場合はそれに加えて、「その少年が更生するのにもっとも効果的な処分は何か」ということを考えるのです。
重大な事案であれば、大人と同じように民事裁判で処断されることもありますが、原則としては少年法に規定される保護処分(少年院送致、保護観察処分等)が課されます。
また、報道の制限についても少年が将来、社会に出てきた際に更生を阻害しないよう、少年を推知することができる報道をしないよう少年法で規定されています。
さて、その少年法ですが、今年、令和3年の5月21日に改正されました。平成30年の民法等改正で成年年齢が引き下げられたことに併せ、
「少年法の適用年齢も20歳未満から18歳未満に引き下げたほうが良いのではないか」という理由で法改正が検討されたのです。
しかし、成年年齢が引き下げられても対象の子どもたちの性質が変わるわけではありません。皆さまの周囲を見渡しても、18歳はまだまだ子供だと思います。
悪く言えば未成熟、考えが足りない。よく言えばこれからいくらでも変われる年齢です。
そこで、改正法では18歳及び19歳の者を「特定少年」として、原則として今までの通り少年事件として扱うこととしました。
ただし、特定少年については今まで大人の事件と同様に扱っていた重大な事件の範囲を広げて、
例えば、強制わいせつ罪等の犯罪を行った者については原則として大人の事件と同じように扱うこととし、その場合「少年を推知することができる報道の禁止」の対象外としました。
法改正がなされたばかりで、運用はこれからです。
しかし法改正によって18歳、19歳の者について、丁寧な更生への働きかけの機会が減ってしまう可能性があります。
将来の再犯を減らすためにも、改正法の運用にあたっては18歳、19歳への丁寧な働きかけが必要不可欠になってきます。
社会全体が少年の更生について、厳しくも温かい目線で見守る必要があると考えています。
※写真はイメージです。
投稿者プロフィール
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●記事執筆:弁護士 藤田香織
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