強い世論を受け、(使い勝手の悪い)雇用調整助成金の拡充措置が次々と講じられています。
毎週のように制度が変わるので、日々情報を追っかけていると〝またか〞と溜息をつきたくなりますが、休業している企業には有利な緩和措置なので、前向きに捉えて取り組んでいます。
毎日、寄せられる雇用調整助成金の相談には、いくつか誤解されている点があるのに気づきます。
今回はその中で「休業」について解説してみたいと思います。
雇用調整助成金はそもそも、「休業」した日に会社が従業員に支払う休業手当の補てんを目的とした制度になります。そのため、あくまでも「休業」した日や時間が対象になります。
「休業」と同じように仕事をしなかった用語に、休日(公休日)や年次有給休暇(有休)、欠勤などがあります。助成金の申請では、どの日が「休業」で、どの日が「有休」や「欠勤」になるのかを区分したうえで正確に給与計算をしないと支障を来してしまいますので、ご注意ください。
【休業とは?】
「休業」とは、「労働者が、事業所において所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全一日にわたり労働することができない状態又は当該所定労働日の所定労働時間内において1時間以上労働できない状態」と定められています。つまり、働くべき日(労働日)にもかかわらず、会社の指示等で仕事をしない日・時間のことです。
労働基準法では「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。
【類似用語との相違点】
下記の3つは「休業」ではありませんので、雇用調整助成金の対象にはなりません。
● 休日:土日や祝日など雇用契約で元々働かなくてもよいと定められた日です。
● 有休:労働者の権利で、申出により労働日に休むことができる日です。法律上、休んでも給与は100%支払い義務があります。類似用語に「特別休暇」があります。通常、法律上の「有休」とは別に、会社が任意で有給で休暇を付与します。給与は100%支給です。
● 欠勤:労働日に、発熱や子供の世話などの私用により、本人の都合で仕事をしない日です。あくまでも本人都合なので、「有休」や「特別休暇」扱いにしない限り、給与を支払う必要はありません。
では、「在宅勤務」の場合はどうでしょうか。在宅勤務は文字通り自宅での「勤務」になりますので、実際にどの程度仕事をしているのかわかりませんが、労働をしていたり、命じている場合は「休業」に該当しませんので、その分の給与は100%支給になります。
また、「休業」を「自宅待機」と呼ぶ会社もあります。労働をしていないのであれば「休業」になりますが、しているのであれば「休業」に該当せず、在宅勤務と同じ扱いになります。
なお、従業員本人が新型コロナウイルスに感染した場合に、休んでいる期間の給与も休業手当も支払う義務はありません。健康保険制度より傷病手当金が支給されることになっています。
【通勤手当の取扱い】
休業や在宅勤務が長くなるにつれて、通勤手当の取扱いの相談が増えています。
一般的に、通勤手当は1ヵ月間などの定期代を実費で支給していますので、休業や在宅勤務で実費がかかっていなければ支払う義務はありません。休業等が長引くようであれば、出勤日数などを考慮して支給基準を設ける必要があります。ただし、従業員にとっては減額になりますので、丁寧な説明は求められます。
また、在宅勤務の場合、電気代や通信費、あるいは消耗品の購入などの出費がありますので、その実費負担として、一定額の在宅勤務手当を支払う会社が増えています。
5月21日現在、神奈川県はまだ非常事態宣言が解除されていませんので、5月31日まで休業を余儀なくされる会社がたくさんあろうかと思います。
雇用調整助成金の1日の上限額が8,330円から15,000円に引き上げられそうなので、事業主にとっては朗報ですね。
早期の終息を願うばかりです。
投稿者プロフィール
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