自粛ムードの気が滅入る時だからこそ、日本から遥か遠く、コロナウイルスとは無縁の世界の話をお届けしたいと思います。
弊社は2011~2013年の3期に渡り、南極にある昭和基地周辺にアンテナを設置するプロジェクトに参加し、測量分野で貢献しました。
そのプロジェクトについてはまた別の機会にお伝えするとして、「南極ってどうやって行くの?」「どんな所なの?」というテーマで息抜きしていただきたいと思います。
日本の南極観測の拠点となる昭和基地、実は南極大陸にはなく、隣にある東オングル島にあります。
南極はどこの国の領土でもありませんが、敗戦国であった日本には端っこの、かつ接岸が非常に困難な場所が割り当てられたのでした。
しかし現在では一番観測に適した場所だとも言われており、困難な状況を乗り越えるために生まれた技術の結晶が世界屈指の砕氷船を作り出した由縁なのかもしれません。
その砕氷船(南極観測船)は現在の『しらせ』で4代目となり、海上自衛隊員は日本から、民間人はオーストラリアから乗船して昭和基地へ向かいます。
なぜ民間人はわざわざオーストラリアから乗るのかというと、自衛隊は太平洋上で極秘訓練をしているとの情報があるようです(本当かどうかは分かりません)。
そもそも『しらせ』は海上自衛隊の船であり、昭和基地は人数制限の都合上、自衛隊員は南極にいる間も『しらせ』で寝泊りしているのですから、少しぐらいは自由に使ってもらっても誰も文句は言えないでしょう。
また、2011年に数か月ぶりに南極から帰還した『しらせ』は束の間の休息も経ず、そのまま東北の被災地へ向かいました。本当に自衛隊の皆様には頭が上がりません。
さて、砕氷船というと水面の氷を割りながら進む船というイメージですが、『しらせ』はそんな生易しいものではなく、南極に近づくにつれ分厚くなる氷に対し助走をつけて氷の上に乗り上げ、船の重みで氷を割って進む「ラミング航法」という必殺技を使います。
これを一度の航行で4000回以上するのですから、乗り心地は想像を絶します。オーストラリアから昭和基地まで1か月ほど時間が掛かるのも頷けます。
昭和基地へ到着すると、待っていたのは意外や意外、国内有名ハウスメーカーのひとつであるミサワホームが建てた建物です。とは言っても3LDK2階建の憧れのマイホームではなくプレハブ工法のシンプルな建物となります。しかし過酷な環境で観測隊員の人命や生活を守るわけですから、安全性は申し分ありません。
弊社が作業をした1月から3月は南極では真夏の時期となり、最高気温は±0度ほどになります。東京の真冬の最低気温と同じぐらいですが、南極では毎日氷点下であることから±0度を超えると半袖で外作業をする人もいるほどで、人間の適応力とは凄まじいものです。
真夏の南極は太陽が一日中沈まない「白夜」という状態になります。外がメインの測量作業では、「日が暮れたから今日の作業終わり」というかけ声は日課のように使いますが、白夜の南極ではそのかけ声はどこからも聞こえてきません。
代わりにあるのは23時以降仕事をしてはいけないという南極ルールです。夜の来ない世界にオンとオフの境界線を作ることは体調のバランスを考えたうえでもとても大切なことです。
ここでひとつ南極ならではの不思議体験をお伝えします。
常に氷点下が当たり前の南極では「さぞかし息は真っ白で会話をするだけで相手の顔が見えなくなるのではないか」と想像してしまいますが、実は真逆の状態になります。
南極ではどれほど寒くなっても息は白くなりません。息が白くなる原因は空気中の塵や埃に水蒸気が当たって起きる現象であり、南極のような空気がきれいな場所では水蒸気が当たる対象がないため、息が白くならないのです。
映画やドラマで放送された南極に関する作品では、役者さんが話すシーンは必ず白い息が出ていますので、南極でロケをしていないことが分かってしまいます。
しかし息の白く出ない作品では極寒の状況が伝わらないため、それはそれでありなのかもしれません。
今回は息抜きタイムを提供しようと、測量から離れた内容でお届けしました。
自粛が終わっても今までのような経済活動に戻るのはまだ時間が掛かりそうです。しかし、私は前向きに考え、今回の件で世界がひとつになるきっかけとなることを期待しています。転んでもただでは起きない人間の知恵と底力を見せる時ではないでしょうか。
投稿者プロフィール
- 土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記をお客様に代わって申請できる唯一の国家資格を持つ専門家です。不動産は高価な資産であり、正確に登記することが財産の保全にも繋がり取引の安全が計れます。当事務所では、昭和26年開業以来『迅速』『丁寧』『正確』をモットーにさまざまな業務を取り扱ってきました。豊富な経験を生かし、お客様が安心してご依頼いただける、まちの専門家であり続けたいと思っております。
最新の投稿
- 土地家屋調査士の体験談2023年10月10日【私が土地家屋調査士になるまで】運命的に導いた二つの言葉
- 境界調査・測量2021年8月18日気になる「境界線」について考えてみよう(後編)
- 境界調査・測量2021年8月18日気になる「境界線」について考えてみよう(中編)
- 境界調査・測量2021年5月11日気になる「境界線」について考えてみよう(前編)
100年ライフマネジメント
月々1000円(税込)で専属アドバイザーには何度でもご相談いただけます。