平成30年に発生した大きなトピックとして、
カルロス・ゴーン元日産会長(以下「ゴーン元会長」)の逮捕がありました。
日産はルノーとも提携するなど、世界的な企業となっていただけに、
長年にわたって同社を引っ張ってきたゴーン元会長の逮捕は耳目を集めました。
ところで報道によると、この事件では日本版司法取引が利用されたとのことです。
以前に司法取引についてはお話ししていますが、
今回はこの事件を通して、改めて司法取引についてお話ししたいと思います。
尚、以下の内容は報道を前提にしており、
今後の報道や裁判等によっては異なった事実関係が明らかになることもありますので、
この点ご了承ください。
司法取引の具体的な内容
①
司法取引の内容を改めて確認すると、
検察官による証拠収集に被疑者・被告人が協力し、
その見返りに刑事責任の減免を受ける制度のことを指します(詳細な内容は以前の記事を参照してください)。
②
司法取引の対象となる犯罪は組織的な犯罪や経済犯罪とされており、個別に法律で決められています。
今回、ゴーン元会長や日産は金融商品取引法違反の罪に問われています。
具体的には上場している企業が発行する有価証券報告書において、
ゴーン元会長が受け取ることになっている報酬について、
虚偽の記載をしたということが問題になっているとのことです。
有価証券報告書(同法24条により作成を義務付けられているもの)につき、
重要な事項について虚偽の記載のある物を提出した者について、
10年以下の懲役もしく は1,000万円の罰金(これらの片方もしくは両方)に処することとされており、
今回の件は、その罪を犯したとされているのです。
虚偽記載については虚偽記載をした個人が処罰されるだけではなく、
法人についても7億円以下の罰金が科せられることになります(同法207条1項1号)。
そのため仮にゴーン元会長にかけられている嫌疑が罪にあたるとする場合、
関係している個人(同時に逮捕されたグレッグ・ケリー元社長など)に加え、
日産も処罰の対象となり得ると考えられます。
後編ではゴーン元会長がどのような状況で逮捕に至ったのかを解説します。
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