みなさんは『前頭側頭型認知症』という言葉(病名)を聞いたことはありますか?
現在65歳以上の認知症患者は約460万人と推計されていますが、その半数以上はアルツハイマー型が占めておりこの『前頭側頭型認知症』はわずか数%に留まっているということです。
一般的にはまだまだ知れ渡っておらず、理解もされていないのです。
『前頭側頭型認知症』はアルツハイマー型認知症と違い、妄想や幻覚が少なく日常生活は普通に出来ていますが、一旦、興味を引くものが眼に入ってしまうと、どうにも自分を制御出来なくなってしまうという特徴があります。
つまりそれが「店などでの窃盗や無銭飲食に繋がってしまう」ということなんです。
これは当然つかまります。起訴されて懲役の判決が出てしまいます。執行猶予になったとしても、また同じ事が繰り返されます。
病気なので当たり前です。
家族も周囲の人たちも『前頭側頭型認知症』なんてことは想定しておらず『懲りない盗み癖』で片づけてしまい、本人を非難して責めてしまいます。
そして本人のプライドや尊厳はズタズタにされる訳です。
それまでの生活態度やそもそもの人格にあまりにも変化が見られた時は単なる『盗み癖』で片づけずに、
これからは本人の様子をよーく観察して認知症の可能性を考えてみるべきでしょう。
少し話は変わりますが、認知症患者の中には時に多くの人を巻き込む大規模な事故を引き起こしてしまう可能性もあります。
ご記憶の方もいるかと思いますが、認知症を患っている方が徘徊中に踏切内に入り込み、自身は電車にはねられて亡くなってしまった事故がありました。
この事故における鉄道会社からご家族への損害賠償請求額は、およそ700万円だったそうです。
ご家族の監督責任が問われた裁判は最高裁まで争われ、最後はご家族に倍賞責任は無いという判決が下され、ほっと胸を撫で下ろしたのを覚えております。
そこでこの請求額なんですが、この時は地方のローカル線であったため、約700万円という数字でした。
でも、もし都心の過密運行路線だったらどうでしょう?
倍賞請求額は数千万円以上と予想できます。
ご家族の監督責任が問われるか否かは状況次第です。自動車による事故も同様です。
あまり良くない話ではありますが、損害賠償の金額について触れてみます。
被害者への損害賠償額が最も高くなるのは、被害者がどのような方の場合だと思いますか?
最も高くなるのは小さな子供さんのような感じがしますが、実は働き盛りの高年収の方を寝たきりにさせてしまった場合なのです。
将来稼げたはずの金額に介護の費用が加わるため賠償金額は大きくなります。年収がわかるためはっきりと計算が出来るからなのです。
小さな子供さんの場合は、将来稼げる金額の明確な計算ができないため、意外と低く計算されてしまうようです。
高齢者の方の場合では、収入が年金のみの場合だとすると、そこから生活費を差し引くので、賠償額はやはり低くなるということです。
このような不幸な事態は起きないに越したことはありませんが、万一起きてしまった時の対策も視野に入れておくべきでしょう。
例えば、火災保険や自動車保険などの損害保険に個人賠償責任保険を特約でつけておく等の方策が思いつきます。
認知症は病気です。
ある程度の予防は出来たとしても、全く防ぎきることは不可能です。
認知症にかかったとしても、自分も家族も安心して暮らせる社会を作りたいものです。
今回はとても重い話題になってしまいましたが、今、私達が直面しているのは現実的な「長生きリスクの問題」です。
眼を背けてはいけないのです。
本人とご家族でだけではなく、皆で協力して何とかしていかなくてはいけないテーマなのです。
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