1.電通事件の概要
違法な長時間労働により過労自殺を招いた電通事件が大々的に報道されています。折しも11月は「過労死等防止啓発月間」に当たるだけに、注目の的となっています。
電通では平成3年にも同様の事件が起きました。そのときは最終的に和解となって、会社側が遺族に約1億7,000円の和解金を支払いました。その事件以来、企業は従業員が健康を害することなく働けるよう安全配慮義務を負っている、というのが広く知れ渡るようになりました。
安倍政権でも現在、働き方改革の一環として長時間労働対策を重要テーマとしていますので、政治的にも関心の高い事件と言えます。
2.労働基準監督署からの勧告の強制力
新聞報道によると、電通は東京本社以外に全国の支社でも労働基準監督署から是正勧告を受けていたようです。
是正勧告とは、労働基準法に抵触する違反行為が発覚し、それを是正するよう行政指導を受けるものです。是正勧告は、「勧告」(行政指導)であって、法的強制力はありません。したがって、是正に基づき、改善するかしないかは会社の自由です。
しかし、法律違反であることは明らかなため、何度も是正勧告を受け改善しない場合は、書類送検される可能性があります。そのため、会社としては、最終的には是正に従って改善を行うことになります。
3.労災認定基準
今回の事件は遺族側の訴えにより、労働災害(労災)と認定されました。過労自殺やうつ病等の精神障害が労災に該当するかどうかは、厚生労働省作成の判断基準に基づき審査されます。
この基準には、ひどい嫌がらせがあったか、直近6ヵ月平均の時間外労働が80時間以上、または前月で100時間以上あったか、などがあります。労災認定は厳格な審査が行われますので、労災認定されるか否かの判断は申出から概ね6ヵ月程度の期間を要します。
詳しくは、「精神障害の労災認定」、「脳・心臓疾患の労災認定」で検索してみてください。
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