この度、約120年ぶりに大規模な債権法の改正がなされました。
明治29年に民法が制定されて以来、債権法はほとんど改正されていませんでしたが、社会情勢の変化や判例の積み重ね等の影響を受けて、ここで改正されることになりました。
改正の量は非常に多いですが、今回は「個人が保証人になる場合の規定の新設」、「債権の消滅時効期間の変更」、「従来は瑕疵担保責任として処理されていた事項の変更」の3つに絞って説明します。
個人が保証人になる場合の保護
法人などが事業のために負担した貸金等について、個人が保証人になることがあります。
その場合、個人はその責任を十分に理解せずに保証人となって、結果として多額の請求を受けて生活が破綻するということもありえます。
そこで改正法は「個人が法人等の貸金債務等について保証人になる場合、公正証書を作成しなければならない」としました(465条の6)。
また、「法人等は保証を委託する個人に対し、財産や収支状況等を提供しなければならない」とされました(465条の10)。事前に十分な情報を与えることが目的です。
そうすることによって、個人が安易に法人等の多額な債務につき保証人ならないよう抑制していると言えます。
ただし例外的に「個人」が借主の取締役、過半数の株式を有する者等の場合は公正証書を作成しなくても保証人になれます(465条の9)。
経営者などは経営状態等を把握しており、安易に保証をするという問題が小さいからです。
債権の消滅時効期間の変更
今までは、債権の消滅時効は原則として権利を行使できる時から10年間でした。
しかし改正法は「債権者が権利を行使できることを知った時から5年間」で消滅時効が完成することとしました(166条)。
これにより、債権の時効期間は原則として5年間に統一され、改正前の10年間から比べると短くなりました。
改正前は「権利を行使することができる時」から期間が進行するとされていましたが、改正法は「債権者が権利を行使することができることを知った時から」進行するとして、債権者の保護を図っています。
一方で「債権者が権利を行使できることを知ることができなかった」としても「権利を行使することができる時から10年間」で消滅時効が完成することとしました(166条)。
契約不適合責任
これまで瑕疵担保責任については、瑕疵があった場合に追完請求ができるか不明確であるといった問題や、代金減額請求ができない等の問題がありました。
改正法は「瑕疵」という文言を使用せず、移転した目的物や権利が契約の内容に「適合」しない場合に、売主に対し責任を課すことにしました。
具体的には…
追完請求権(562条)
代金減額請求権(563条)
債務不履行責任としての損害賠償請求権及び解除権(564条)
…などです。
また、買主がその不適合を知った時から一年以内に買主に通知しない場合は、これらの権利を行使することができなくなります(566条)。
ただし、数量不足の場合には期間制限は適用されません。
今回の改正は従前の瑕疵担保責任に加え、追完請求権、代金減額請求権を追加するものです。
また、従前の判例通り物的瑕疵(例:物の不具合)だけでなく、移転した目的物や権利が「契約の内容に適合」するものでない場合に責任を課すという点を明らかにしたものです。
これらは債権法改正の一部でしかありません。
もしご心配なことがあれば、お気軽にまちの専門家グループまでお問い合わせください。
投稿者プロフィール
- 当事務所はさまざまな分野の法律紛争に対応しておりますが、案件としては相続事件がやや多めになっております。相続対策は早いほど効果的。気になることがある方は一度ご相談ください。平成25年4月 当事務所の弁護士たちで、東洋経済新報社より『新版 図解 戦略思考で考える「相続のしくみ」』を上梓しました。事務所は、アクセスの良い銀座一丁目駅にあります。まずはお問い合わせください。
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