相続税について皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
人が亡くなり財産を相続したらかかる税金、また遺言が出てきたことにより財産を取得したらかかる税金など、いろいろ考えられると思います。
もちろん、相続や遺贈により財産を取得すれば相続税が発生する可能性があります。
この“財産”は大きく以下の二つに分類されます。
法施行地にあるもの、つまり日本国内にある財産、これを国内財産と言います。
これに対して、法施行地にないもの、つまり日本国外にある財産、国内財産に対して国外財産と言います。
この“国内財産”と“国外財産”に対して相続税がかかることになります。
ただし、相続する人や亡くなった人が日本にどのくらい住んでいたかによって、
国内財産と国外財産の両方の財産に相続税がかかったり、国内財産のみに相続税がかかったりします。
平成29年の税制改正では、この納税義務のあり方が見直されました。
国外に住所を移して税金を免れる問題や、日本にたまたま短期間住所を持っていた外国の方が日本で亡くなった場合、
相続税の負担が大きくなってしまうなどの問題があったためです。
平成29年の改正を踏まえ、「どのような人がどのように相続税がかかるのか」をまとめてみたいと思います。
★ケース1
財産を取得した人が日本に住んでいる場合
今までは財産を取得した人の住所が日本にある場合、国内財産と国外財産の両方に相続税がかかっていました。
しかし平成29年の改正では、財産を取得した人や亡くなった人がどのくらい日本に住んでいたかによって相続税がかかる範囲が変わりました。
【1】財産を取得した人が長期間日本に住んでいる場合
この場合は、国内財産と国外財産の両方に相続税がかかります。
具体的にいうと、次の一時居住者という条件に当てはまらない人をいいます。
一時居住者
相続開始の時において在留資格を有する者であってその相続の開始前15年以内において法施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
簡単にいうと、日本に住んでいた期間が短い人をいいます。
つまりこの一時居住者に該当しない、長期間日本に住んでいる人は全ての財産に相続税がかかる可能性があります。
【2】財産を取得した人が短期間日本に住んでいる場合
これは財産を取得した人が“一時居住者”に該当する場合です。
この場合は、亡くなった人、つまり被相続人がどのくらい日本に住んでいたかによって課税の範囲が変わります。
A:被相続人が長期間日本に住んでいた場合
この場合は、国内財産と国外財産の両方に相続税がかかります。
具体的にいうと、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人に該当しない場合です。ややこしいですね…
≪一時居住被相続人≫
相続開始の時において在留資格を有し、かつ法施行地に住所を有していた被相続人であって、その相続の開始前15年以内において法施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
≪非居住被相続人≫
相続開始の時において法施行地に住所を有していなかった被相続人であって、以下の“イ”または“ロ”のいずれかに該当するものをいう。
【イ】その相続の開始前10年以内のいずれかの時において、法施行地に住所を有していたことがあるもののうち、その相続の開始前15年以内において法施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの(その期間引き続き日本国籍を有していなかったものに限る)。
【ロ】その相続の開始前10年以内のいずれかの時においても法施行地に住所を有していたことがないものをいう。
簡単に言ってしまえば、日本に住んでいた期間が短期間であった被相続人ということです。
財産を取得した人が短期間日本に住んでいた場合でも、亡くなった人が長期間、日本に住んでいれば全財産に課税されてしまいます。
B:被相続人が短期間日本に住んでいた場合、この場合は、国内財産のみに相続税がかかります。
これは、亡くなった人が上記の一時居住被相続人又は非居住被相続人に該当する場合です。
財産を取得した人と亡くなった人が共に短期間日本に住んでいた場合は、相続税がかかる範囲が国内財産に限定されました。これが平成29年の改正で新たにできました。
日本にあまり関りが無ければ、相続税を少なくしようというわけです。
財産を取得した人が日本に住んでいる場合を簡単にまとめると以下のようになります。
① 長期滞在者である被相続人から長期滞在者である相続人等へ ⇒ 全財産課税
② 短期滞在者である被相続人から長期滞在者である相続人等へ ⇒ 全財産課税
③ 長期滞在者である被相続人から短期滞在者である相続人等へ ⇒ 全財産課税
④ 短期滞在者である被相続人から短期滞在者である相続人等へ ⇒ 国内財産のみ
その②では、財産を取得した人が日本に住んでいない場合の相続税について解説します。
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