相続税の節税のためタワーマンションの住戸を購入して賃貸する「タワマン節税」が注目されています。
相続税額を計算する際、不動産の財産評価は現金や有価証券を下回りますが、
特にタワーマンションは条件次第で大きな節税効果が見込めるのです。
ただし、この手法が否認された事例があります。
その事例は以下のとおりです。
① 平成19年7月4日 父親が入院
② 8月4日 父名義でマンションを2億9,300万円にて購入
③ 9月3日 父親が死亡
④ 相続税申告(マンションの評価額は5,802万円)
⑤ 翌年7月23日 相続人がこのマンションを2億8,500万円で売却
簡単に言うと父親が亡くなる直前に高層マンションを購入し、安い評価額にて相続税の課税を受け、
相続税の申告が終わるや否や、このマンションを売却し再び現金に戻したわけです。
時系列でみると節税目的にしか見えないこの事例ですが、さすがにこれについては課税庁側と納税者側で争いになりました(最終的には納税者の主張は通りませんでした)。
因みにこの時の適正な価格とされたのは2億9,300万円でした。購入価格そのままですね。
納税者側は税額が安くならないばかりか、
2億9,300万円で買った物件を2億8,500万円で売った事実だけが残ることになり、
800万円も損してしまいました。
財産評価基本通達にのっとって計算しても、それが必ず通用するわけではないのです。
特別な場合は合理的に評価をしなければならないと言うことですね。
上記のような状況に対し、政府は課税適正化を目指しているそうですが、平成29年度税制改正において固定資産税の計算方法が見直されることになりました。
この改正、実は固定資産税評価額は変わりません。
そのマンション一棟に課される固定資産税の各部屋への按分方法を変えると言うことです。
この改正によりタワーマンションの内、低層部分の固定資産税は安く、高層部分の固定資産税は高くなります。
この改正の対象となるタワーマンションは平成30年4月1日から新たに課税対象となるタワーマンションから適用されます。
よって現在すでにタワーマンションを所有していらっしゃる方は対象外となります。
上記の改正、「固定資産税評価額は変わりません」とあります。
…ということは、「相続税の方には全く影響がないのではないか?」という疑問が生じますが、その通り。
そこはこれまでと何ら変わりません。
平成29年度税制改正は相続税のタワマン節税封じにはなりません。
その件に関しては、財産評価基本通達の見直しは引き続き検討される模様ですし、固定資産税評価額自体の評価額そのものの引き上げも検討されております。
「それでは、これからも暫くは上記のような手法を使い、相続税を減額することができるのではないか」と思われてしまいますが、
国税庁は「個別に評価することで相続税の課税適正化を図る」方針を明らかにしております。
具体的には通達改正や固定資産税評価額が改正されるまでは、これまで通り固定資産税評価額を基本とし、
時価と固定資産税評価額に著しい乖離がある場合には個別に判断を要するというところでしょう。
タワーマンションに係わる税金のお話は、これからの数年で大きく変わろうとしています。
タワーマンションを購入予定の方は専門家にご相談の上、
最新の情報を仕入れ、よく検討されることをお勧めします。
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