近年、多くの企業で特許技術のオープン戦略が有益な営業戦略として認識されており、 古くは日清食品のカップヌードルがこの戦略をとって成功しています。
カップラーメンに関する特許技術を多くの企業にライセンスすることにより粗悪品を排斥して、 良品質のカップラーメンを市場に流通させ、カップラーメンの一大市場を形成したという成果を上げております。
この特許権の利用形態には2つあり、
第1は特許権者が独占排他的に特許技術を実施する形態であり、
第2は多くの企業にライセンスを供与して特許技術を実施させる形態です。
第1の形態では、特許権者の受ける利益が大きいという利点はありますが、
他方、商品の供給能力が限られるため消費者に需要を喚起させ市場を拡大させるには時間がかかり、商品の認知度を高めることが容易ではないという不利な面があります。
この点、第2の形態によれば商品供給規模も大きくなるため、商品に対する消費者の注目度も増し、需要を喚起させる効果が大きいといえます。 特許権者が独占的に実施することによる独り勝ちを目指すのでなければ、この第2の形態による戦略が好ましいといえます。
これが特許技術のオープン戦略といわれるものです。
NHKの朝ドラ「まんぷく」でもこのような特許開放によるカップラーメン市場の拡大が題材として採りあげられており話題となりました。
トヨタ自動車は、期限付きながら燃料電池自動車の特許を無償開放したことが既にマスコミで報じられており、最近の新聞報道によれば、プリウスに代表されるハイブリッド車などの電動化関連技術の特許を無償開放することが報じられています。
これらは燃料電池自動車やハイブリッド車などの電動車の普及を目指すものでトヨタ自動車が打ち出したオープン戦略です。
もとよりオープン戦略の裏にはクローズ戦略があります。
開発された技術の核となる部分は特許出願せずにノウハウで抑えておくか、
あるいは特許出願してもその特許について、他社にライセンスを供与しないという戦略です。
核となる技術の周辺技術については他社にライセンス供与し、
それにより市場を大きく形成する一方で、開発技術の代替品が出現しにくいようにするものです。
開発された技術のどの部分をクローズし、どの部分をオープンにするかは
各企業にとって経営陣の腕の見せ所と言えるでしょう。
投稿者プロフィール
- 特許・実用新案としては主に、プラスチック・洗剤・機械・光学機器部品・建築・材料・日用品を取り扱っており、営業戦略的に価値ある特許取得を目指します。意匠としては、光学機器部品・清掃具関係を主に手がけております。商標については、ネーミングの段階からご相談に応じております。主要国の外国代理人とは密に連携しておりますので、緊急な案件にも速やかに対応できます。
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