改正建築物省エネ法(以降「省エネ法」)により2025年4月以降に着工する、一般住宅を含めたすべての建築物で省エネ基準への適合が義務化されます。
ここでは住宅にテーマを絞り、2025年春以降に住宅を建てる人、購入する人はどう対応すればよいのか、押さえておきたいポイントを解説したいと思います。
現在使われている省エネ基準
省エネ基準とは、建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準で、断熱等性能基準と一次エネルギー消費量基準からなります。
「断熱等性能」は住宅の外皮(躯体や開口部)の熱の通しにくさを表し、「一次エネルギー消費量」は住宅が一年あたりに消費するエネルギー量を表したものです。
等級は、断熱等性能等級で7段階、一次エネルギー消費量等級で6段階あり、数字が大きいほど性能が高いことを示します。
現在の省エネ基準は平成28年省エネ基準と呼ばれるもので、適合するには「断熱等性能等級4」、「一次エネルギー消費量等級4」以上を満たす必要があります。
では、そもそも省エネ基準が求める「等級4」の取得はハードルが高いことなのでしょうか?
国土交通省の推計では令和4年度の新築住宅の省エネ基準適合率は85.3%となっており、すでに新築住宅の8割以上で省エネ基準に適合していると考えられています。
私自身の経験からも、現在市場で流通している標準的なサッシ、断熱材、エアコン機器、給湯器などを適切に組み合わせていけば、省エネ基準に適合することはさほど難易度は高くないと言えます。
言い換えると、省エネ基準はこれからの住宅の最低水準という言い方のほうが正しいかもしれません。
これからの省エネ性能「ZEH基準」
さてここからが本題ですが、
「これから住宅を建てる人、購入する人は省エネ性能についてどうするのがよいか」
…ということについて話を進めていこうと思います。
実は義務化される省エネ基準については、2030年にはさらにワンランク上の性能であるZEH基準への等級の引き上げが想定されています。
その場合、数年以内には現在の省エネ基準は古いものとなってしまいます。
そこで、2025年度以降に住宅を建てる方、購入する方には、省エネ基準ではなくZEH基準以上を目安とすることを推奨したいと思います。
ZEHとは、
Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
…の略称で、建物の断熱性能の向上と高効率設備の導入などによる「省エネ」と、太陽光発電などのエネルギー創出による「創エネ」によって、エネルギー収支が実質ゼロになることを目指した住宅をいいます。
ZEH基準の省エネ性能としては、「断熱等性能等級5」、「一次エネルギー消費量等級6」に適合する必要があります。
ZEH基準住宅の3つのメリット
ZEH基準の住宅を新築すること、購入することのメリットは大小ありますが、ここではわかりやすいメリットを3つほど挙げます。
1つ目は省エネ基準の住宅より省エネ性能が高まること
2つ目は住宅ローン減税の借入限度額が増えること(令和6年11月現在)
3つ目は補助金の対象となること(令和6年11月現在)
…です。
① 省エネ性能が高まること
まず、1つ目の省エネ性能が高まることについては、省エネ性能としては省エネ基準と比べて、断熱性能等級が4から5、一次エネルギー消費量等級が4から6になります。
断熱性能の向上や高効率機器の採用で、省エネ基準より月々の光熱費が下がることはもとより、体感として快適な環境を得られるということもメリットとして挙げられます。
一方、ZEH基準とすることで建築コストが上ってしまうことがデメリットと呼べるかもしれませんが、そのための施策として住宅ローン減税、補助金があります。
② 住宅ローン減税の借入限度額が増えること
2つ目の住宅ローン減税は住宅の新築・取得・増改築等をする際に金融機関などから借り入れを場合に年末ローン残高の0.7%を所得税から最大13年間控除する制度です。
現在、借入限度額(減税の対象となる年末ローン残高)として、
省エネ基準は3,000万円(子育て世代4,000万円)
ZEH基準で3,500万円(子育て世代4,500万円)と500万円
の優遇差があります。
13年という長い控除期間を考えると、金額差による恩恵は小さくありません。
また、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅を目指すとZEH基準よりさらにプラス1,000万円の住宅ローン減税が受けられますので、検討してみるのも良いと思います。
新築住宅等の税制優遇については国土交通省のHPに記載がありますので、ぜひ参考にしてください。
③ 補助金の対象となること
3つ目の補助金としては現在、国が実施する「子育てエコホーム支援事業」がZEH基準で対象となります。
1住戸に対して80万円の補助を受けられますので、性能アップに伴う建築費用に充てるイメージで捉えると良いと思います。
この補助金が来年度以降も継続となるかは現段階で確定していませんが、少なくともこの数年は事業名称を変えながら同等の補助金は継続している状況です。
また、国の補助金以外にも地方自治体独自の補助金制度がありますので、住み替え計画に先立って調べてみるのもひとつの手です。
ここまで、省エネ基準の適合義務化について住宅に関することを中心に説明しましたが、
大切なことは「自分たちがこれから住みたい家はどのような省エネ性能、快適さを必要としているか」をしっかりと考えることです。
その理想の住まいの間取り、予算、性能、デザイン、補助金などを一緒に考える家づくりの伴走者として、私たち建築士がいることを覚えていただければ幸いです。
投稿者プロフィール
- 当事務所は個人住宅、共同住宅、事務所ビル、保育園、公共施設などの建築設計を幅広く手掛けております。特に近年は鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に関しての新築、改修、調査のご相談が多く、得意とするフィールドのひとつになっています。神奈川・東京を中心に全国の建物に関わるご相談を承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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