親が子どもを育てることができない環境にある場合、里親制度を利用することがあります。
“里親”とは簡単に言うと「実の親に代わって子どもを育てる」ことを言います。
しかし里親といっても、大きく分かれて「養育里親制度」と「養子縁組里親制度」があります。
その違いは何でしょうか。
養育里親になるためのステップ
「養育里親」とは児童福祉法に基づき、児童相談所や里親支援機関からの委託されて、子どもを引き取り養育することを言います。
原則として18歳までで、その間子どもが家庭復帰するなどした場合、関係が解消されます。
ステップとしては研修と登録を経て、里親となる候補者として待ちます。候補者として条件に合った子どもがいた場合、数回にわたって養育の機会が与えられ、適切であると判断された場合に養育里親として認められ、子どもを育てることになります。
最近では小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)といって、5~6人をグループホームで養育する施設もあります。
また職業ではないですが、子ども達の里親となることを専門としている人達もいます。
世間一般でイメージが湧くのは養育里親かと思います。
他方、養育里親は子どもとの間に法律上の親子関係はなく、親権者でもありません。
養子縁組里親になるためのハードル
それに対し、養子縁組里親は養育里親と同じような過程で子どもを受け入れますが、その際に家庭裁判所の許可を得て養子縁組をすることになります。
養子縁組は「通常の養子縁組」と「特別養子縁組」に分かれます。
通常の養子縁組は、子どもが15歳未満であるときには実親の承諾が必要です。
この場合、子どもは養親と実親と両方との間で法律上の親子関係にあることになり、養親(里親)が親権者となります。
そして、里親が子どもを育てます。
特別養子縁組は、原則として子どもが6歳まででないとできませんでしたが、法改正により15歳未満まで期限が伸びました。
特別養子縁組をすると、里親と子どもは法律上の親子となり、里親は親権者となります。
里親は配偶者と一緒でなければ特別養子縁組をすることはできません。
また、里親は原則として25歳以上でなければなりません。
他方、特別養子縁組をした場合、子どもと実親との間の法律上の親子関係は終了します。
実親との法律上の親子関係が終了するので、特別養子縁組が認められるまでのハードルは高いです。
里親制度の現状と今後
本年に施行された改正児童福祉法は児童虐待件数増加に伴い、子どもの保護を強化しました。
市区町村が包括的な援助をする「こども家庭センター」の設置をするよう努めるようにするなどです。
同時に妊産婦の保護も強化しています。
各家庭で事情が異なるので「子どもをただ保護すればよいのか」、または「実親も含めて支援をするのか」、どちらかのより適切な対応をとることになります。
しかし、最も重視されるべきは子どもの健全な育成にあることは間違いありません。
そして、実親から離れるとしても「養育里親制度を利用した方がよいのか」、または「養子縁組里親制度を利用した方がよいのか」は里親の意思と環境、子どもの順応性などによるでしょう。
いずれの制度を利用するにしても、「里親になりたい」と登録している夫婦は多くいます。
子どものことを考えて、最も幸せになれる方法を採ってもらうことを願ってやみません。
投稿者プロフィール
- 当事務所はさまざまな分野の法律紛争に対応しておりますが、案件としては相続事件がやや多めになっております。相続対策は早いほど効果的。気になることがある方は一度ご相談ください。平成25年4月 当事務所の弁護士たちで、東洋経済新報社より『新版 図解 戦略思考で考える「相続のしくみ」』を上梓しました。事務所は、アクセスの良い銀座一丁目駅にあります。まずはお問い合わせください。
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