今年は台風や地震などの自然災害が頻繁に発生しています。
記憶に新しいところでは、9月末の台風 24 号では、
一部の区 間では交通機関がストップしてしまい、
居住地域によっては遅刻または通勤が不可能というケース がありました。
このような自然災害時における勤怠の取扱いや、
従業員の安全配慮についての相談が多く寄せられました。
このような自然災害時の労務管理について、相談事例を中心に解説します。
【台風が接近した時の労務管理はどうしたらいいか?】
① 終業時刻より早く帰宅させた場合の給与処理は!?
例えば、台風が接近し交通機関が止まる恐れがあったために、
通常より 2 時間早く帰宅を許可 する場合において、2 時間分の賃金をカットするかどうかの問題があります。
法律上は「ノーワーク・ノーペイの原則」により不就労分をカットすることが出来ます。
しかしながら実務上、時給者については 2 時間分の賃金をカットする(支給しない)会社はありますが、
月給者の賃金をカットしている会社はないようです。不公平感はありますが…
② 安全配慮義務とは!?
会社は従業員に対してその生命・身体等の安全を確保しつつ、労働することができるように
必要な配慮をおこなう「安全配慮義務」を負っています。
自然災害時などに会社が強制的に働かせて従業員が怪我した場合に、
使用者は安全配慮義務違反による損害賠償責任を負う可能性があります。
災害の規模などにもよりますが、帰路まで障害が多いと思われる遠隔地の方から随時帰宅させ、
全員が無事に帰宅できるよう、会社には「安全配慮義務」が課せられています。
納期の逼迫等どうしても早く帰れないような場合は、
宿泊の手配等の配慮が必要とされます。
【自然災害の影響により交通機関がストップしたときは?】
① 迂回経路での通勤に伴う通勤交通費の支払義務は!?
交通機関が不通となった時、別の交通機関(迂回経路)を利用して出社したり、タクシーを使って出社する従業員もいます。
その場合の通勤交通費については、別途追加支給する必要は ありません。
また、実際にも、別途支給している会社は少数かと思われます。
② 交通機関ストップに伴う遅刻・欠勤の場合の給与処理は!?
交通機関がストップして遅刻した場合、または出社できない場合は
法律上は「ノーワーク・ノ ーペイの原則」から、その時間分・日数分の賃金をカットすることはできます。
しかしながら、実務上では「遅延証明書」の提出を条件に遅刻時間分の賃金をカットしていない会社や、
出社できない場合は年次有給休暇を充当するなどの対応を取っている会社が多いようです。
この取扱いにより、時間通り出社している従業員から不公平だという意見は聞きませんが、
交通機関の遅延が予想される場合は、遅刻しないために早めに家を出ることを改めて従業員に周知しておく必要があります。
ご参考までに、
厚生労働省では平成28年熊本地震の震災被害により出勤できなかった労働者の賃金取扱いについて、
下記のコメントしています。
『労働契約や労働協約、就業規則等に労働者が出勤できなかった場合の賃金の支払について定めがある場合は、それに従う必要があります。また、例えば、会社で有給の特別な休暇制度を設けている場合には、その制度を活用することなども考えられます。このような定めがない場合でも、労働者の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労働者の不利益をできる限り回避するように努力することが大切です。』
従業員の落ち度ではない自然災害を原因とする勤怠管理では、
「ノーワーク・ノーペイの原則」 による賃金カットにこだわらずに、
みなし労働や年次有給休暇を充当するなど、
社内の取り決めを従業員に周知徹底して、社内秩序の維持を図る必要があります。
投稿者プロフィール
- 当事務所は、従業員1名から上場企業まで幅広い企業様とお取引をさせていただいています。各社の企業規模や業種特性に応じて、適切かつ柔軟に対応できるのが強みです。また、経営理念として、人事・労務・社会保険業務を通じて、経営的な視点からお客様企業の(1)より良い企業風土づくり、(2)より強い企業体質づくり、(3)より業績の向上、につながるよう日夜努めています。
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