被相続人が遺言書を遺すことなく相続が開始すると、法定相続もしくは相続人全員による遺産分割協議を行なうことになります。
相続人全員が普段から連絡を取り合っているような仲であれば、互いに連絡を取り合って遺産分割協議を行なうことができるでしょう。
しかし、戸籍謄本等による相続人の調査をした結果、被相続人の前妻の子や甥・姪など面識のない方や、疎遠な方も相続人になることがわかった場合には遺産分割協議を始める前に、まずその方と連絡を取らなければなりません。
遺産分割協議では相続人全員の同意が必要
遺産分割協議は上記の法定相続人全員が参加したうえで、遺産の分け方について相続人全員が同意することで成立します。
相続人のうち1人でも欠いた状態で遺産分割協議をすると、他の相続人全員が合意をしていたとしても、その遺産分割協議は無効となってしまいますので、面識がない相続人や、疎遠となっている相続人も必ず含めて協議を行なわなければならず、まずはその相続人と連絡を取る必要があるのです。
面識がない相続人や疎遠な相続人に連絡を取る手段
被相続人が亡くなると、電話やメールなどを利用して親族に訃報を知らせるのが一般的です。
しかし、面識がない相続人の場合には、電話番号やメールアドレスを把握していないため、それらの手段を利用することはできません。
疎遠になっている相続人や面識のない相続人に相続手続きについて案内するには、どのような方法があるでしょうか。
このようなケースでは、面識がない相続人の「住所」を調べ、「手紙」を出すという方法が推奨される手段です。
「住所がわからない相手の住所をどうやって調べるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、「戸籍の附票」を取得することによって、住所を確認することができます。
戸籍の附票とは、「本籍地の市区町村において戸籍の原本とともに保管されている書類」のことをいい、戸籍が作られてから現在までの住所が記録されている書類です。
まずは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、そこから派生して面識がない相続人の戸籍謄本も取得します。
戸籍謄本に記載されている本籍地が分かれば、本籍地の市区町村役場において戸籍の附票を請求することができます。
戸籍の附票を取得することによって相手の住所を把握しても、いきなり相手の自宅を訪ねるということは控えましょう。
いきなり面識のない人や疎遠人が自宅に訪ねてくると相手も警戒してしまい、その後の遺産分割協議にも悪影響が及ぶ可能性もあります。
手紙の内容
面識のない相続人や疎遠な相続人に手紙を送る場合は、その内容を慎重に考える必要があります。
内容に問題があり相手に不信感や警戒心を抱かれてしまうと、その後のスムーズな話し合いが困難になってしまいます。
手紙に書くべき6つの事項
面識のない相続人や疎遠な相続人に送る手紙には、以下の事項を記載するとよいでしょう。
① 自分が誰であるのか
まずは、自分が誰であるのかを明らかにするために、名前や被相続人との続柄を記載します。
突然知らない人や疎遠な人から手紙が届くと警戒されてしまいます。
自分の身分を明らかにすることが大切です。② 被相続人が亡くなったことおよびその日時
被相続人が亡くなったということだけでなく、その日時についてもしっかりと記載します。
相続放棄や相続税の申告をする際には、期限があります。
そのため、それら期限を相手に知らせるだけでも重要な情報となります。また、面識のない相続人であっても被相続人とは親しくしていた、という可能性もあります。
単に亡くなったということだけではなく、亡くなった経緯や状況などについても差し支えない範囲で記載するとよいでしょう。③ 手紙を出すことになった経緯
被相続人が亡くなり相続が開始したこと、相続の手続きを進めていくためには協力が必要になることなど、手紙を出した経緯について詳しく説明をします。最初の手紙でいきなり遺産分割について触れると、警戒されてしまう可能性もあります。
手紙を出すことになった経緯の説明に留めておくのがよいでしょう。④ 住所を知った経緯
面識のない人や疎遠な人からいきなり手紙が届くと「どうやって住所を知ったのだろう?」と不安になる方もいます。
そのため、「相続人調査のために戸籍を取得した」こと、「戸籍の附票によって住所を知った」ということを説明すると相手も安心するはずです。⑤ 返信期限
手紙の内容で相手の返事を求める内容が含まれる場合には、「いつまでに回答をして欲しい」という期限を設けるようにしましょう。
明確な期限が設けられていないと、面倒だからという理由で後回しにされてしまい、なかなか返事をもらうことができないことがあります。相続放棄や相続税の申告期限が迫っているという場合には、そのことも伝えて早めに回答をもらえるようにお願いするとよいでしょう。⑥ 連絡先の記載
電話やメールでのやり取りを希望する場合には、差出人の電話番号やメールアドレスを記載します。
手紙を出しても思うような結果が得られない場合
面識のない相続人や疎遠な相続人がいる場合には、上記のように手紙を送ることによって連絡を取ることができる可能性があります。
しかし、場合によっては手紙を送ったのに連絡が来ない、連絡が来たものの遺産の分け方で揉めてしまう事態が生じる可能性もあります。
どうしてもその相続人の協力が得られない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てる必要があります。
また調査を尽くしても行方がわからない音信不通の相続人がいる場合は、ケースに応じて家庭裁判所へ失踪宣告の申立や不在者財産管理人選任の申立を行なうなどの必要があります。
共同相続人に面識のない方や疎遠な方が含まれている場合には、通常の相続手続きに比べてトラブルになる可能性が高くなるため、早めに司法書士などの専門家に相談をすることをおすすめします。
ご自身で手続きを進めていくことに少しでも不安がある場合には、どうぞ、溝淵事務所にお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
- 昭和54年の開業以来一貫して「お客様第一」の姿勢を徹底しております。 進化する生活の町「武蔵小杉」を基盤にもっとも身近なリーガルアドバイザーを目指し、総勢35名のスタッフで業務を行っています。 お客様との「信頼関係」それが私たちの財産です。 これからも、お客様のおかげで私たちがあることを忘れずに、お客様第一主義 を徹底いたします。
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