後編では特に法規制の厳しい都市部で住まいづくりを考えている方を対象に「高さ制限についてのポイント」について、以下の3つを解説したいと思います。
③ 方位による高さ制限
④ 日影による高さ制限
⑤ その他の高さ制限
方位による高さ制限
まず「③方位による制限」について解説したいと思います。
建物は南から太陽の光を受けて北側に影を落とします。
つまり、敷地の北側に建物を寄せて高く建てた場合、隣の家にはあまり日が当たりらないことになります。
そうした市街地の日照や日影に配慮した斜線制限の一つが北側斜線です。
真北方向にある隣地境界線、または前面道路の反対側の境界線からの距離に応じて、一定勾配の範囲内には建物が計画できない規制です。
用途地域では第1・2種低層住居専用地域、第1・2種中高層専用地域のみ係る規制ですので、この地域に該当しているかどうかの確認が必要です。
また、北側斜線と同様に方位による制限として自治体で独自に設定している高度地区と呼ばれるものがあります。
北側斜線は前述の用途地域でしか規制されませんが、高度地区の斜線制限はすべての用途地域で規制が可能です。
今回テーマとしている都市部の場合、北側斜線ではなく高度地区の斜線制限がかかる地域が多く、それぞれの自治体によって制限する斜線勾配、高さ、緩和規定などが異なります。
種類も、第1種高度地区、第2種高度地区などいくつかありますが、どの自治体でも「第1種」が原則的に厳しい規制ため、敷地が第1種高度地区かどうかをまず確認するのがよいでしょう。

日影による高さ制限
「④日影による高さ制限」について解説したいと思います。
その名前の通りですが、日影規制と呼ばれ建物が周囲に落とす日影を制限します。
敷地境界線から水平距離5m、10mの範囲内に一定時間以上の日影を落としてはいけないという規制です。
あらゆる用途地域で日影規制は掛かりますが、商業地域と工業地域は原則としてかかりません。
第1種・第2種低層住居専用地域の場合は軒高7mを超える場合、または3階建ての場合に規制があります。
それ以外の地域では10mを超える場合ですので、住宅の場合は階数を3階以内かつ10mに抑えて日影規制がかからないように計画するケースが多いです。
敷地に対して道路が北側にある場合に日影規制は緩和対象となり、高く建てやすくなります。
これは「③方位による制限」でも緩和されるケースがあり、川や公園、水路、線路が北側にある場合も緩和対象となる可能性ありますので、不動産情報を見る際に敷地の面する環境を確認することも重要です。
その他の高さ制限
「⑤その他の高さ制限」について解説したいと思います。
用途地域とは別に、地区計画、風致地区、建築協定などその地域で高さを規制している場合がありますので、特殊な地域ではないかという確認が必要です。
また高低差のある敷地は建物の高さを測る位置、北側斜線や高度地区の斜線制限の位置が目視では判別できない高さとなることがありますので、注意が必要です。
隣地斜線という斜線制限もありますが、高さ20m以上の規制となるため、個人住宅を建てる際にはほぼ影響を及ぼさないため説明を割愛します。

まとめになりますが、都市部で「なるべく自由なプランニングをしたい」と考えると、下記の点に気をつけながら土地購入を検討すると良いと思います。
● 用途地域の確認
● 道路幅員の確認
● 方位の確認
● 高度地区の確認
● 道路の位置の確認
● 特殊な地域ではないかの確認
● 高低差の有無の確認
当然ですが、都市部では「希望する地域に希望通りの建てやすい条件がそろった土地に巡り合う」ことの方が難しいと思います。
マイホームを建てることは一生に何度もあることではありません。
しっかり知識を得ておくことはもとより、土地購入前に私たちのような建築士にご相談いただくことで、どのぐらいの広さと高さと階数の建物が建てられるかを正確に知ることができます。
残念ながら「土地を購入する前に建築士に相談する」という選択肢がまだまだ世間に浸透していないことも確かです。
今回の解説を通じて建築士の存在を身近に感じてもらえれば幸いです。
本テーマは一般の方にわかりやすく解説することを目的としているため、詳細な法規制の解説まではしておりません。
それぞれの制限内容について詳しく確認したい場合は、弊社にお問合せいただくか、各自治体のホームページなどに掲載されている資料や解説を併せてご参照ください。
投稿者プロフィール

- 一級建築士事務所
- 当事務所は個人住宅、共同住宅、事務所ビル、保育園、公共施設などの建築設計を幅広く手掛けております。特に近年は鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に関しての新築、改修、調査のご相談が多く、得意とするフィールドのひとつになっています。神奈川・東京を中心に全国の建物に関わるご相談を承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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