今回は、国土交通省が11月に発表した「地価LOOKレポート」についてみてみたいと思います。
地価LOOKレポートの正式名称は「主要都市の高度利用地 地価動向報告」と言い、四半期に一度発表されています。
今回は令和2年第3四半期(7月1日~10月1日)時点で、特にコロナウィルス感染症の影響が出ている時期の貴重なデータとなります。
詳細なデータはリンクの「地価LOOKレポート」をご参照ください。
この地価LOOKレポートは、変動の方向が矢印で示されているため、直感的で分かりやすいのではないかと思います。
全国で100地点(住宅地・商業地合計)の地価動向を調査していますが、今回は上昇が1 地区、横ばいが54 地区、下落が45 地区。
前期に引き続き1地区の上昇除いて横ばい又は下落となっている模様です。
上昇の1地点は札幌市中央区の駅前通りの商業地でした。
以下にて首都圏、そしてその中でも神奈川県の動きを見ていきたいと思います。
全体的には前期(令和4年1月1日~7月1日)から傾向は大きくは変わっていないようです。
まず首都圏の商業地に関しては、丸ノ内、有楽町、銀座、渋谷など従来より繁華性が高く、インバウンド需要等も見込めていたような超一等地を中心に下落傾向になっています。(丸ノ内、有楽町は今期より下落になりました)。
一方、住宅地は全体的に横ばいが多い模様です。
次に神奈川県内について個別に見ていきたいと思います。まず商業地からです。
JR横浜タワーや鶴屋町ビルが開業し繁華性を取り戻しつつある横浜駅西口商業地は横ばい傾向。
実際に歩いてみても、横浜駅構内やその周辺の人通りは緊急事態宣言前となんら変わらない印象を受けます。
オフィス需要が堅調で、空室率が1%を切る水準のみなとみらい商業地も横ばいです。
川崎駅東口や武蔵小杉駅の商業地も堅調なオフィス需要に支えられ横ばい傾向。
東京の一等地の商業地と比較すればオフィス供給が少ない割に需要が高いという背景があるのではないかと感じます。
特に武蔵小杉では駅周辺の再開発が進み、今後よりオフィス需要が高まるものと考えられます。
唯一、県内の商業地で下落と判定されたのは中区元町。路面店舗が多いエリアでコロナウィルスの影響等により空室が増えたことが影響しており、今後も厳しい状況が続くのではないかと思われます。
次に神奈川県の住宅地ですが、2地点設定されています。
横浜市都筑区のセンター南地区、川崎市麻生区の新百合ヶ丘地区の両者はいずれも横ばいと判定されました。
前者は子育て世代を中心に住宅地域として人気があり、後者も従来より堅調なマンション需要が続く地域。
調査時点でコロナウィルスの影響が大きく出ていないとはいえ、マンションの供給側であるデベロッパー(不動産開発業者)も用地取得等の少し様子見をしている状況も見られるため、今後、何らかの影響が出るかもしれません。
一般的に景気動向と地価は同じような動きをします。これを地価は景気の「一致指数」であると言います。
一方、賃料は景気や地価から遅れて影響を受け変動します。そのため賃料は景気の「遅行指数」であるという言い方をします。
景気が悪くなり地価が下がっても、家賃はそれと同じようにすぐには下がらないことはイメージできるのではないでしょうか。
現在でも企業のオフィス減床のための移転や、賃料減額交渉、また退去の動きなどが出ていますが遅行指数である性質から、影響がより出るのはこれからとも考えられます。
令和2年度第一期ごろより、下向き方向の矢印が増えているように見受けらますし、賃料の影響等も少し注視しつつ、次回の発表も待ちたいと思います。
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