新型コロナウイルスに感染したら労災になるのか?

労災

「新型コロナウイルスに感染したら、労災認定になりますか? それとも健康保険の適用になりますか?」

社会保険労務士の仕事をしていると、このたびの新型コロナウイルス感染症に関連して、雇用調整助成金以外にも様々な相談が寄せられます。
確かに仕事が原因で感染したら労災になるような気もしますが、どこで感染したか特定できないケースも多々ありますので、判断に迷います。

この疑問に対して、厚生労働省より判断基準となる通達(基補発 0428 第1号)が4月28日に発せられました。今回はこの通達から労災認定の判断基準を見ていきます。

労災と健康保険の違い
本題に入る前に、ます労災と健康保険の違い(概要)を簡単に整理しましょう。

① 加入対象者
労災は正式には労働者災害補償保険といい、労働者が対象です。週1日しか働かないパートさんであっても、すべての労働者が対象になります。健康保険は約週30時間以上働く人が会社の健康保険に加入します。

② 対象となるケガ等
労災は業務上または通勤途中のケガや病気が対象で、健康保険は業務外のケガ等が対象です。

③ 保険料
労災は自己負担なし、健康保険料は給与額の約
5%(労使各々)かかります。

④ 治療費
労災は原則かかりませんが、健康保険は
3割が自己負担です。

⑤ 休業補償の金額
労災は給与額の約
80%で、健康保険は約67%あります。

このように、健康保険よりも労災の方が有利な制度となっています。労災に認定されるか否かによってその後の生活にも大きく影響します。


労災と健康保険の主な相違点(概要)

労災認定の考え方
続いて、本題の通達を見ていきます。
まず、今回の新型コロナウイルスへの感染が労災に認定されるか否かの考え方としては、「現時点の感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという感染症の特性に鑑み適切な対応が必要」としており、労災給付の範囲を広く捉えています。

認定基準については、「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とする」として、従事する業務を重要視しています。


具体的な取扱い
国内での感染と国外での感染によって、取扱いを区分しています。

国内の場合
国内の取扱いは、(1)医療従事者等、(2)医療従事者等以外で感染経路が特定された者、(3)医療従事者等以外の労働者で(2)以外の者、の3つに分けて基準を定めています。(3)に該当する場合の判断は困難かもしれませんが、(1)(2)はかなり明確になったかと思います。

(1)医療従事者等
患者の診療、看護の業務、介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。

(2)医療従事者等以外で感染経路が特定された者
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。

(3)医療従事者等以外の労働者で(2)以外の者
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下で業務に従事して感染したときは、個々の事案に即して適切に判断すること。この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。

ア.複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
イ.顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

国外の場合

海外出張労働者
海外出張者については、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクがると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断すること。

海外派遣特別加入者
海外派遣特別加入者については、国内労働者に準じて判断すること。


日に日に感染者数が減少してきました。ご参考までに横浜市と神奈川県の感染者数は、次の通りです。非常事態宣言の解除が早まるのを期待する声も聞かれます。
しかし、緊張感が少しでも緩むとまた感染者数が急増する懸念もありますので、注意しましょう。


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