保証人、連帯保証人になることにはちょっと考えてしまうことが多いと思いますが、
自分ではそのつもりがなくても、
「お父様が亡くなって土地建物を相続で取得したら、お父様が誰かの連帯保証人になっていた」
…なんてことがあるかもしれません。
もしも、保証人等になって自分が債務を弁済しないといけなくなった時に、
「自分の家をやむを得ず売却してその資金を弁済に充てる」ということが起こるかもしれません。
弁済が終わって、ひと息つくと、忘れていけないのが「確定申告」です。
土地建物など売却すると売った年の翌年3月15日までに確定申告書を提出しなければなりません。
売った土地建物等が買った時よりも高く売れてしまうと所得税、復興特別所得税、さらに住民税がかかります。
「代金を弁済に充てて、お金はほとんど残っていないのに税金まで取られるなんて!」ということが起こるかもしれません。
そんな時のために、所得税には“保証債務を履行するための資産の譲渡”というものがあります(所得税法第64条2項)。
これは、本来の債務者が債務を弁済しないときに保証人等が肩代わりをして、その債務を弁済することをいいます。
この特例にあてはまれば、売却した時に掛かる所得がなかったものとされ、税金が少なくなります。
私の取り扱った事例では全額減額されました。
国税庁のホームページでは保証債務の履行に当てはまる主なものを次の四つとしています。
① 保証人、連帯保証人として債務を弁済した場合
② 連帯債務者として他の連帯債務者の債務を弁済した場合
③ 身元保証人として債務を弁済した場合
④ 他人の債務を担保するために、抵当権などを設定した人がその債務を弁済したり、抵当権などを実行された場合
特例の要件は次の三つすべてに当てはまらなければなりません。
① 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと
② 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること
③ 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと
回収できなくなったこととは、本来の債務者が破産をしていたり、失踪をしている等の場合で、
「資力を失っている」、「弁済能力がない」、「将来的にも回収できない」場合をいいます。
所得がなかったものとされる金額は、
① 肩代わりをした債務のうち、回収できなくなった金額
② 保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額
③ 売った土地建物などの譲渡益の額上記のうち、一番低い金額
…です。
国税庁のホームページで見ると、少し分かりにくいですね。
保証人になってしまい、本来の債務者が弁済できない、弁済後回収できない状態にあって、
保証した債務を弁済するために土地建物などを売ってその代金を弁済に充てた場合、
「譲渡益の全部を納税しなくても良い」ということになります。
自己資金で弁済した後に、土地建物を売った場合や、本来の債務者に弁済能力があったり、
自己の債務のために弁済したものであったりすると認められないので注意が必要です。
あくまでも譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係がなければ認められません。
弁済の後に債務者から返済してもらっても、特例は使えません。
この特例が使えるかどうかは、個々の案件で詳細に見極めなければなりませんし、
安易に特例を使って申告した後に否認されて、
本税以外にも延滞税や過少申告加算税なども納めなければならないこともありますので、
慎重に検討しなければなりません。
しかも、保証債務の事実がわかるものや、本来の債務者が弁済できないことが分かる書類など、客観的に証明できるものを一緒に添付しなければなりません。
要件が厳しいですが、使えればこれほど助かることはありません。
通常、売却して利益が出たら納めなければならない税金ですから、
それを減額してもらうには、よほど納税するのに困っている場合の救済のためにできた法律ですので、要件が厳しいのです。
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