家の老朽化で建て替えをしたいけれども、所有者である親が高齢という理由などで子どもが親の土地に家を建てることがあります。最近は二世帯住宅というパターンも多いようです。
しかし土地は親名義で、家は子ども名義という、いわば「いびつな関係」になってしまいます。このように、子どもが家を建てる場合の土地の使用に関する法律関係は…
①使用貸借契約
または
②賃貸借契約
になることが多いでしょう。
使用貸借契約
使用貸借契約とは、無償つまり「タダ」で土地を利用することです。
多くの家庭では賃料を支払わず、明示的または黙示的に使用貸借契約を締結していることになるでしょう。賃貸借契約
賃貸借契約とは賃料(地代)を支払って土地を利用することです。
賃料を支払うのですから、家を建てる際に費用を負担した子どもにはさらなる費用負担が生じることになります。
親が亡くなったら…
親が亡くなった場合、相続が発生します。本件では土地所有者である親の配偶者がすでに亡くなっていて、相続人が子ども3人で遺言書はないことを前提とします。法律上定められている子ども3人の法定相続分は3分の1ずつになります。
この場合、子ども3人は親の遺産をどのように分けるか遺産分割協議をします。
各家庭によって事情は異なりますが、遺産のうち不動産の価値が高い場合が多いです。
不動産の価値は子どもの権利が使用貸借か賃貸借かで変わります。
使用貸借であれば、権利として弱いので、不動産の価値は高くなります。
賃貸借であれば権利として強いので、更地価格から借地権価格(更地価格の6~7割程度が多いです)を除いた価値となります。
そして、本件では親の土地上に家を建てた子どもが「土地を相続したい」と思うでしょう。
しかし、不動産以外の遺産が少なければ、簡単に土地を単独で相続することも難しいことがありえます。
つまり、他の兄弟が自分の取り分は少なくてもよいので「家を建てた子どもが土地を相続してよい」と言ってくれると話はスムーズに進みます。
しかし、そうでない兄弟がいた場合には、家を建てた子どもは金銭的に困ることもあり得ます。
このような場合の解決方法としては…
①:不動産以外の遺産が遺産総額の3分の2を超えていれば、それらの遺産を他の相続人が取得し,家を建てた子どもが土地を相続するという方法
②:不動産以外の遺産が遺産総額の3分の2を超えていなくても、他の兄弟が各3分の1に満ちるまでの金銭を、家を建てた子どもが自身固有の財産から支払う方法
③:①②も難しければ,土地と建物を共同売却して、土地の売却価格を兄弟で分け合う方法が考えられます。
家を建てた子どもとしては、①→②→③の順がいいのは言うまでもありません。
生前の対策
それでは、親が亡くなる前に対処する方法はないでしょうか。
やはり最初に思いつき、かつ重要なのは親に遺言書を書いてもらうことです。
遺言書で「土地は家を建てた子どもに相続させる」と記載してもらうと、土地の所有権を取得することができます。
他方、遺言書があっても相続権が認められる遺留分(本件では3分の1の2分の1ずつなので6分の1ずつ)がありますので、その点への配慮が必要です。
また生前に親から土地を購入する、または贈与を受けるという方法も考えられます。しかし売買であれば、それ相応の売買代金が必要であり、また贈与であれば贈与税が加算されます。
そうすると、やはり遺言書を書いてもらうことが最も効果的でしょう。
親の土地上に家を建てた子どもやその配偶者などは、親の介護などをしているケースが多いです。
他の兄弟がそれらの点を配慮してくれることが望ましいです。
普段から親とも兄弟とも仲良くしていることが、みんなにとって最もよい結論になるのではないかと思います。
相続や遺言、遺産分割で困ったら、お気軽に「まちの専門家グループ」にご相談ください。
投稿者プロフィール
- 当事務所はさまざまな分野の法律紛争に対応しておりますが、案件としては相続事件がやや多めになっております。相続対策は早いほど効果的。気になることがある方は一度ご相談ください。平成25年4月 当事務所の弁護士たちで、東洋経済新報社より『新版 図解 戦略思考で考える「相続のしくみ」』を上梓しました。事務所は、アクセスの良い銀座一丁目駅にあります。まずはお問い合わせください。
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