「遺産相続」と聞くと、誰もが一瞬、財産を手にすることを想像してしまいます。
しかし、まちの専門家見聞録の熱心な読者の皆様ならもうお分かりだと思いますが、“マイナスの財産”、いわゆる借金も「遺産相続」となります。
銀行などの借入れは、とてもわかりやすい“マイナスの財産”と言えます。
分かりやすい“マイナスの財産”であれば、“プラスの財産”と相殺して、プラスが多ければ相続、マイナスが多ければ放棄と、その選択が容易に可能となります。
言い方は不謹慎なのですが、世の中には“棚ボタの相続”と呼ばれるものが存在します。
お付き合いの全くない親族からの相続などが該当するのですが、お付き合いが無いが故の問題点がございます。
その問題点とは、”亡くなった方の生活スタイル”が分からないことによる思わぬ事態です。数年後に債権者から借入金の返済を求められる…なんてことがあるからです。
頼まれごとを断れない良い人、「任せておけ」の親分肌、これらヒトトナリは、懇意に付き合っていない限りわかりません。
銀行や不動産担保の借入れなどは非常に調査が容易です。これに対して保証債務(保証人)などは公示されておらず、見つけ出すにはある程度しっかりとした情報がなければ無理なのです。
故人と懇意にしていれば、生前にヒントとなるエピソードも聞けますが、死亡の連絡が初めての連絡だというような場合では保証債務の有無の確認をするのは、至難の業を通り越して実質不可能です。
そして債権者から遅れて(相続放棄の申述期限後)連絡がくるのは、借主が返済をしないことに対しての督促、そして相続人調査にかかる時間のためです。
保証人への督促は、このように主債務者の債務不履行が引き金となります。相続をしてしまった後、それもかなり時間が経過してから保証債務が飛び出してくるのには、そういう理由があるからなのです。
ここで恐ろしいのは、一旦相続手続きをしてしまうと債権者からの督促を理由とした「相続放棄」は出来ないということです。
相続放棄申述期間を経過したものが認められるには、その条件のハードルはとても高いものです。
注意すべき相続手続きとは、銀行口座の解約払戻しなど、故人の遺産を一部でも受領することを指します。
これを行なってしまうと、結果としてわずかな預貯金の分配をしてしまったがために、それ以上の借金を背負ってしまうリスクが伴ってしまうのです。
突然の「遺産相続♪」に心躍らせるのではなく、まずは「ちょっと待てよ…」の慎重さを持つ必要があります。
その上で専門家との繋がりを最大限に利用し、十分な確認を行いリスクの低減を心掛ける。これはもはや当たり前の対策です。
知らない人からの「遺産相続」は、注意が必要なのです!
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