相続手続きを行なう際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があります。
本籍地を数回変更している場合も少なくなく、複数あった本籍地から戸籍謄本を取り寄せなければならないケースもありますが、新たに導入された戸籍謄本の「広域交付制度」によって市民の負担が大幅に減りました。
戸籍謄本の「広域交付制度」とは
令和元年5月24日の戸籍法改正後、令和6年3月1日より開始した戸籍謄本の広域交付制度により、最寄りの市区町村役場において従来は取得できなかった他の市区町村役場の戸籍謄本であっても、戸籍を管轄する法務省の戸籍情報連携システムを利用して、一括で取得することができる制度のことです。
相続手続きの場合には、原則として被相続人(以下、亡くなった人)の出生時から死亡時までの戸籍をすべて集めなくてはなりません。
出生時の本籍地から結婚や転籍などを経て、本籍地を数回変更しているケースも多々あるため、郵送で取り寄せる場合には「取り寄せた戸籍謄本の記載を確認して、また別の市区町村役場に請求する」という手順を死亡時からさかのぼり出生時まで、すべて揃うまで繰り返すことになります。
郵送で取り寄せるには、インターネットなどで本籍地のある市区町村役場のホームページから申請書をダウンロードし、必要書類及び郵便局で購入する定額小為替、返信用封筒を同封のうえ、郵送をする必要がありました。
この手続きは、司法書士などの専門家は別として一般の人にとって非常に負担のかかるものでした。
この負担を軽減するために、他管轄の戸籍謄本であっても最寄りの市区町村役場でまとめて請求できるようにした制度が「広域交付制度」です。
戸籍広域交付の注意点
このように、この戸籍の広域交付制度は非常に便利で負担が軽減されるものですが、申請方法や発行対象について何点か注意点があります。
● 発行対象
兄弟姉妹の戸籍は請求できない
戸籍の広域交付制度利用して請求できるのは、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られています。
つまり、兄弟姉妹、または叔父や叔母などの戸籍謄本を請求することはできません。
戸籍の附票は取得できない
戸籍の附票とは、その本籍地に本籍を置いている間に登録していた住所地の変遷が記載されているもので、相続登記においては、亡くなった人の不動産の登記簿(登記記録)上の住所と最後の住所のつながりを証明する書面を添付しなくてはなりません。
これは登記簿の人物と亡くなった人の同一性を書面で証明するためですが、住民票や住民票除票では前住所表記までしか記載されないため、戸籍の附票が必要になる場合があります。
しかし、戸籍の附票は広域交付では取得できないため、必要となる場合は従来どおり、戸籍の附票は別途本籍地を管轄する市区町村役場に郵送、または出向いて請求することになります。
● 申請の注意点
郵送や第三者による請求はできない
郵送請求の方法を利用して戸籍の広域交付制度を利用することはできません。
この制度を利用する場合には、必ず請求者本人が市区町村役場に直接出向く必要があります。
また、通常の手続きでは、委任状を用意して第三者に請求を委託することもできますが、戸籍の広域交付制度を利用する場合は、請求者本人が窓口に出向く必要があり、委任状による請求はできません。
役所により受付時間や発行期間に違いがある
最寄りの役所にて申請書を作成し、必要書類を提出したら戸籍の広域交付の申請が受け付けられますが、受付には予約が必要な場合があります。
また発行についても即日交付してくれる役所もあれば、発行まで1週間程度を要する役所もあるようです。
また、受付も通常の開庁時間と異なっていることがあります。
事前に必要書類や予約が必要かどうか、発行期間などを最寄りの役所に確認するとよいでしょう。
相続手続きにおいて戸籍謄本など必要書類の収集は手続きの入り口にすぎません。
相続関係が複雑な場合や、複数の相続財産がある場合などは特にその後のスムーズな手続きが必要となります。
司法書士などの専門家であれば、広域交付では取得できない戸籍謄本、その他の書類の収集はもちろん、その先の遺産分割協議書の作成、相続登記、銀行口座解約などの遺産承継業務に至るまで、ノンストップで依頼することができます。
広域交付制度を実際に自分で利用して戸籍を集めたとしても、相続関係の手続きに関しては、司法書士をはじめとする専門家に相談しながらスムーズに進めることをお勧めします。
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