【日照権】日当たりの受忍限度とは?

日差しのイメージ

日照権とは自分の建物に対する日照の利益を保護する権利です。
ただし、日照権そのものを定めた法律はなく、他の法令や判例上、日照権が保護されています。
とはいえ、社会共同生活を送っている以上、どのような場合であっても自分が満足いく日照の利益を受けられるわけではありません。
では、どのような基準で日照権は保護されているのでしょうか。

日照権

日照権への行政規制

【1】建築主は戸建てやマンションを建築する際に、事前に建築確認申請をして建築確認許可をしてもらう必要があります。その場合に建築基準法、条例等による制限があります。

【2】建築基準法は、①日影規制と②斜線制限を規定しています。

① 日影規制とは1年で一番日が短い冬至日(12月22日頃)を基準として、用途地域ごとに建築する建物の高さに応じて、日影を一定以上の時間生じさせない規制です。

② 斜線制限には(ⅰ)道路斜線(ⅱ)隣地斜線(ⅲ)北側斜線があります。
(ⅰ)道路斜線…建築する建物に接する道路の反対側の建物の日照などを確保するための規制です。反対側の建物の高さに応じて,建築する建物の高さを制限します。
(ⅱ)隣地斜線…建築する建物の高さを隣地境界線からの距離に応じて、一定限度に制限する規制です。隣地に面した建物部分の高さが20メートルもしく31メートルを超える部分についての制限になります。第一種・第二種低層住居専用地域以外に適用されます。第一種・第二種低層住居専用地域は、そもそも10メートルもしくは12メートルの高さ制限があるので対象外です。
(ⅲ)北側斜線…北側隣地に対する悪化を防ぐために北側に課せられる規制です。北側の建物(北側の建物からすると南側方面)に対する採光や風通しを確保することが目的です。ただし、北側斜線は住居専用地域しか対象となっていません。

【3】その他、各自治体で規制している場合があります。例えば東京都は「東京都 日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例」を制定し、日影規制の内容をより具体化しています。また「東京都 中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」では、標識の設置や近隣住民への事前説明義務等が定められています。

【4】建築主はこれらをクリアしたうえで、建築確認申請し、建築確認処分をしてもらうことになります。

民事上の日照権侵害

上記した行政規制に反しないで建物を建築する場合、原則として日照権を侵害しているとはなりません。しかし、例外的に社会共同生活を送るうえで、受任すべき限度を超えている場合には日照権侵害となりえます。

このことを「受忍限度論」といいます。

一般的に受忍限度において考慮される要素として…

① 被害の程度
② 地域性
③ 加害回避可能性
④ 被害回避可能性
⑤ 建物の用途
⑥ 先住関係
⑦ 公法的規制違反の有無
⑧ 交渉過程等

…があげられます。

もっとも、受忍限度を超えていると判断されるハードルは高く、容易には認めてもらえません。

日照イメージ

対策方法

【1】行政不服審査・行政訴訟
行政規制に違反していれば、行政不服審査や行政訴訟において、建築確認の取消しを求めることになります。建築確認が取消されれば、直ちに工事が止まります。
他方、日照について本質的な争いができるわけではないこと、違法と判断された部分を修正して再度建築確認処分を受けることができる等、気付けなければならないことがあります。

【2】民事訴訟・仮処分
工事完成前であれば工事の差し止めを、工事完成後であれば損害賠償及び違反部分の撤去を求めることができます。
もっとも、先に述べたように「受忍限度が超えている」という判断がされるハードルが高いこと、また損害賠償額が低額になりやすいという面があります。

最後に

日照権侵害があるかないかを判断するためには、色々な観点から見ていかなくてはいけません。
内容も専門的なものが多く、弁護士だけではなく建築士の協力も必要です。
とはいえ、「毎日気持ち良くお日様の光を浴びたい」というのは当然です。日当たりが悪い日々を過ごす前に、早めの対処が必要ですね。

投稿者プロフィール

原・井上・藤川法律事務所
原・井上・藤川法律事務所
当事務所はさまざまな分野の法律紛争に対応しておりますが、案件としては相続事件がやや多めになっております。相続対策は早いほど効果的。気になることがある方は一度ご相談ください。平成25年4月 当事務所の弁護士たちで、東洋経済新報社より『新版 図解 戦略思考で考える「相続のしくみ」』を上梓しました。事務所は、アクセスの良い銀座一丁目駅にあります。まずはお問い合わせください。

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