電通事件にみる労務管理の重要性(後編)

4. 36協定とは?

電通事件では、36協定で定める時間外労働の上限時間(月70時間)を超えて、月105 時間の残業をさせていたことが違法として、是正勧告の対象になりました。

周知のとおり会社は、(法定)労働時間を超えて、あるいは(法定)休日に従業員を働かせる場合に、従業員代表者(労働組合)との間で労使協定を締結して、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第36条)。

36協定では、1ヵ月や1年などの一定期間内の時間外労働の限度時間数を決めます。 この限度時間までは労働させることができますが、法律では月45時間まで、1年では360時間までなどの上限があります。

ただし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き36協定」を結ぶことにより、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

問題なのは、「特別条項付き36協定」には限度時間はありませんので、法律的には何時間でも働かすことができることです。 そのため現在、「特別条項付き36協定」にも限度時間を設け方向で労働基準法改正に向けて審議されています。

5. 改善策・再発防止策

電通以外にも長時間労働が蔓延している企業はたくさんあります。そこで、何故、長時間労働が続くのかを検証する必要があります。

一つは不夜城で働くのが常態化している業界全体の体質に問題があるものと思います。

企業間競争が激化する中、顧客ニーズに応えるため納期の厳守や短縮の要請に追われてしまい、どうしても長時間労働が余儀なくされ、それが知らぬ間に常態化してしまうのが要因です。

これには業界あげての体質改善しか方法はありません。

二つ目は個別企業の社風が影響しているものと考えられます。昭和時代の「モーレツ」 を今でも継承して、長く遅くまで働くのが美学とされる企業風土です。

この解決方法としては、長時間労働の原因を突き止め、経営トップの強い意志で改革するのが最も現実的です。労働時間問題はトップダウンでないと遅々として改革は進みません。

過去にも類似の事件が何度となく起こっています。しかし今回の事件の影響はこれまでとは桁違いです。労務管理の軽視は、経営リスクという重大な代償が伴うことが本格的に認識されるようになりました。

この事件を契機に、企業の労務管理のホワイト化が一層進むものと思われます。

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須田労務マネジメント事務所
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