【2020年に義務化】パワーハラスメント防止策~後編

前編では、パワーハラスメントの法制化について基本的事項を解説しましたが、後編ではパワハラとして賠償を命じられた裁判例をいくつかご紹介します。

①上司の注意指導等とパワーハラスメント(東京地裁八王子支部判決 平成2年2月1日) 


【概要】 
製造業A社の工場に勤務していたBの後片付けの不備、伝言による年休申請に対し、上司CがBに対して反省文の提出等の注意指導を行った。Bは「Cの常軌を逸した言動により人格権を侵害された」と主張してA社及びCに対し、民事上の損害賠償請求をした。 

【判決内容】 
上司には所属の従業員を指導し監督する権限があり、注意したり、叱責したことは指導監督する上で必要な範囲内の行為とした上で、本件の場合は、Cの、反省書の作成や後片付けの再現等を求めた行為は、指導監督権の行使としては、裁量の範囲を逸脱し、違法性を帯びるに至るとして、A社とCに損害を賠償するよう判示した。 





②先輩によるいじめと会社の法的な責任(さいたま地裁判決 平成16年9月24日)  

【概要】 
D病院に勤務していた看護師Eは、先輩看護師のFから飲み会への参加強要や個人的用務の使い走り、暴言等のいじめを受け、自殺した。 

【判決内容】 
判決ではFのEに対するいじめを認定し、FにEの遺族に対する損害を賠償する不法行為責任(民法709条)と、勤務先であるDに対し、安全配慮義務の債務不履行責任(民法415条)を認めた。 





③内部告発等を契機とした職場いじめと会社の法的責任(富山地裁判決 平成17年2月23日)  

【概要】 
勤務先Gの闇カルテルを新聞や公正取引委員会に訴えたHへ、転勤や昇格停止、長期間にわたる個室への配席等を行ったGに対し、Hが損害賠償請求をした。 

【判決内容】 
判決は人事権行使は相当程度使用者の裁量的判断に委ねられるものの、裁量権は合理的な目的の範囲内で、法令や公序良俗に反しない程度で行使されるべきであり、これを逸脱する場合には違法であるとして、不法行為及び債務不履行に基づく損害賠償責任を認めた。 





④肉体的・精神的苦痛を与える教育訓練と上司の裁量(仙台高裁秋田支部判決 平成4年12月25日) 

【概要】 
鉄道会社Iに勤務するJは労働組合のマークが入ったベルトを身につけて作業に従事していたところ、上司Kが就業規則違反を理由に取り外しを命じ、就業規則全文の書き写し等を命じ、手を休めると怒鳴ったり、用便に行くことも容易に認めず、湯茶を飲むことも許さず、腹痛により病院に行くことも暫く聞きいれなかった。 

【判決内容】 
就業規則の軽微な違反に留まるベルト着用に対し、就業規則の書き写しを命じたことは合理的教育的意義を認めがたく、Jの人格を徒らに傷つけ健康状態に対する配慮を怠るものであったこと、教育訓練は見せしめを兼ねた懲罰的目的からなされたものと推認され、目的においても不当なもので、肉体的精神的苦痛を与えてJの人格権を侵害するものであるとして、教育訓練についての企業の裁量を逸脱、濫用した違法なものであるから、上司K及び会社Iに対し、不法行為による損害賠償責任を認めた(民法709条、715条) 




⑤退職勧奨とパワーハラスメント(大阪地裁判決 平成11年10月18日) 

【概要】 
Lは航空会社Mの客室乗務員であったが、通勤途中の交通事故による欠勤後、Mから就業規則上の解雇事由に該当するとして、約4か月間・30回以上にわたる退職勧奨を受け、解雇されるに至った。このMの行為に対し、Lから人格権侵害による損害賠償請求がなされた。 

【判決内容】 
本件解雇は、就業規則に規定する解雇事由に該当せず、Mの対応は、頻度や面談時間の長さ、Lに対する言動など、社会通念上許容される範囲を超えて単なる退職勧奨とは言えず、違法な退職強要として不法行為と判示した。



どの範囲までがパワハラに該当するかを明確に論じることはできませんが、参考になれば幸いです。

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